ベニックソリューションについてAbout Benic

ITオペレーション・プロセス標準化の取り組み

ベニックソリューションは、自社の強みと専門性を強化する活動の一環として、ITオペレーション・プロセスの標準化を戦略的に進めて来ました。今回、その取組みが2009年11月25日のGartner Researchにケーススタディとして取り上げられましたので、その一端をご紹介いたします。
<ケーススタディ:「ベニックソリューションにおけるITオペレーション・プロセス標準化活動に見る成果と教訓」から要約>

背景

ベニックソリューションは、川崎重工業グループの本社IT部門が独立して2001年に設立された。自社の価値を、単なるシステムのお守役ではなく、ITオペレーション管理のプロフェッショナルとして、より適切な品質とコストでITサービスを提供することを理念としている。

課題

ベニックソリューションでは、旧来のメインフレーム中心のシステムからオープン化への移行が進むにつれて、オペレーション管理における正確な実態把握や作業の確実性に限界を感じ始めていた。
もともと、メインフレームが中心であった時代には、ベンダー依存度が高く、ベンダー任せの体制・習慣であったが、一方で開発の標準化、オペレーション・プロセスなどの標準化を進めていた。しかしオープン化が進むにつれ、それらを維持できなくなった。この理由の例としては、属人性の排除ができない、カバーすべき技術が幅広く複雑になった、システム構築優先で運用設計に手が回らなかった、などが挙げられる。結果、提供するサービスの品質低下を招いた。それは障害対応の遅れやコストの増大となって現れ、自社の価値を揺るがしかねない大きな課題となっていた。

アプローチ

ベニックソリューションでは、QCD(Quality、Cost、Delivery)の向上を目指し、属人性の継続的な排除活動を定着させるために、以下の運用5原則を策定した。

  1. ドキュメントの整備
    ドキュメントは、一度作成したオリジナルをブラッシュアップしつづけ、組織全体で共有する(老舗鰻屋のタレ)。
  2. 全ての実態を正確に知る「見える化」の徹底
    業務プロセス、稼動状況、作業ステイタスなど、全ての運用実態の透明度を上げる。
  3. 技術部門と運用部門の独立性確保
    日常の定型業務に技術担当者は絶対に関わらない。
  4. 変更作業における役割分担と相互牽制
    検証シナリオの事前作成と結果検証の徹底:実行計画責任者(設計者)と変更作業者は必ず別人とし、ドキュメントでの指示を徹底する(一人作業の排除)。全ての作業で実施前の検証シナリオ作成不具合発生時のリカバリシナリオを含む)と実施後の検証を義務付ける。
  5. 徹底的な属人性排除と見せる化
    既存業務の圧縮によるコスト削減と新しい価値創造時間を創出する。
    また、経営陣、部門長、現場ライン長の各レイヤによってどのような視点が必要なのか、何を推進すべきなのかについても整理を行った。

プロセス

このような視点の下、ITオペレーション・プロセスの標準化が大きな命題として掲げられた。そこで、ベスト・プラクティスとして実績のあるフレームワーク、IT Infrastructure Library(ITIL)の活用を決定した 。この背景には、体系化され、実績があるフレームワークを活用することで、例えば自社内で独自に標準化を進めるよりもスピード感を持てる、網羅性を高められる、といった理由があった。つまり、ベニックソリューションのIT オペレーション・プロセス標準化は、ITILありきで始まったものではなかった、ということである。 コストの適正化(削減)は1つの目標であったものの、最大の目的は品質の適正化(向上)であった。この背景には、無駄な作業を排除し、作業の正確性を高めながら効率化を図ることで、コストの適正化もおのずと実現できるという認識もあった。なぜなら、まずはどのような作業の何にどのくらい費やされているかなど、状況を正しく把握することから最適化が始まると考えたためである。

ツール

以上のプロセス標準化の取り組みと合わせて、プロセスの実行支援やデータの維持管理をするためのツールについても検討と採用を進めた。そこでは自社のノウハウとツールの成熟度、機能を十分に評価し、適材適所でツールを活用している。

例えば、構成管理データベース (CMDB) としては、Lotus Notes とAsset Centerを併せて活用し、ドキュメントを中心とした情報はNotes、資産情報に近い構成アイテムに関連した情報はAsset Centerと使い分けている。これらは、必ずしもベンダーが推す内容だけではなく、自社に最適なツールで、製品の強みや特色を生かした選定・活用を推進している。
その他、インシデント/問題管理としては、HP Service Centerを活用している。ITインフラストラクチャ・コンポーネントの監視や、ジョブ管理などは、従来IBM Tivoli製品を活用している。

人/組織

さらに、プロセスや作業の標準化を推進するに当たって、より効果的な組織の設計を検討し始め、2008年4月に再編成を行った。川崎重工業グループは、製造業のプロフェッショナルとして多くのノウハウを保有しており、ITにおいても製造業と同じ考えで運営できないかという考えから、組織の再設計を行った。また数年間のプロセス実行の結果、各チームや担当からのインプット/アウトプットが明確になったため、それらがより効果的に組織として連携・機能することも目的としている。
その他、興味深い独自の取り組みとして、新入社員には、CMDB内の棚卸(情報確認や更新作業)を行うことを推進している。こうすることで、まずは自社のIT環境を正しく理解しつつ、標準化されたプロセスにのっとった作業の重要性を認識できる機会が得られる。

成果

数年間、上述の取り組みを経て、以下の面で成果が表れた。

文化的な変化
継続的な活動として改善を行うという意識が、現場レベルまで浸透し始めた。

品質の向上(月次のインシデントの傾向と数値を取得し、分析を実施)

  • インシデントの傾向として、システムの全停止を伴う事象が減少した。特に影響度の大きいインシデントの割合が、およそ10%減少した。
  • インシデントを引き起こす原因分析の結果、ハードウェア/ソフトウェアの故障やバグ、ネットワーク(プロバイダー側)に原因が多いことが発覚した。ハードウェア/ソフトウェアの品質、ベンダー側の対応に問題があることが分かったことで、ベンダー管理、ベンダーとの関係改善、保守契約内容の見直しなどにつなげることができた。
  • 変更作業による障害件数も減少した。

サービス・デスク対応の向上(日次、月次の報告と分析を実施)
1~5日の日数(1日/9時間)を要するコール(比較的重い障害や問題、対応)のクロー件数の割合が2007年度から2008年度でおよそ4%減少した。

可用性の向上
目標達成度をシステムごとに評価した結果、達成度の割合が2007年度は62%であったのが、2008年度では91%に向上した。

業績への貢献
ベニックソリューションが注力する本領域(運用・保守サービス、ITILソリューション)においては、特に本ケーススタディで取り上げている活動の成果が現れ始めた2008年度において、業績(売り上げ)が伸びていることを確認できた。

現在の課題と今後の取り組み

従来は、どちらかというと既存システムを中心とした管理に着目していたが、2009年度より、新たなシステムに対してより早い段階での運用設計を実施し、またその構成を管理していくプロセスを浸透させる取り組みを行っている。しかしながら、まだ取り組み始めたばかりということもあり、課題もある。例えば構成管理では、運用部門側で想定したものと開発側で管理しているものとで、管理する単位が異なることがある。開発側ではソースコード・レベルでのバージョンや依存関係が重要になるが、運用側ではそこまでの詳細な粒度では想定していない。

具体的なデータの持ち方として、どのようにそのレベルを合わせるのか、その管理単位をどのような枠組みで行っていくのかなどが、今後標準化を進めていく上での課題となる。また、ITオペレーション管理に続く重要な要素であることを前提に、チェックリストやプロセスを設定していくことになるが、その重要性を理解してもらうための啓蒙活動も、さらに進めていく必要がある。
また、さらなる標準化を進めるべく、「ベニック・プロセス・イノベーション」という取り組みを開始した。これは、グループ内へのITサービス提供、外販サービスとしてのアウトソース・ビジネスなど全体を通し、個別のユーザー企業 ( 川崎重工業グループ含む) ごとに異なるプロセスが残る部分を、さらに標準化することで、ユーザーに対するサービス・レベルを向上させることを目的としている。本取り組みにおいては、まずは限定した領域において外部コンサルティング・サービスを採用し、第三者の評価を含めることで、より質の高いものを目指している。その後は領域を拡大し、同社内の人員で推進活動を行う予定である。なお、ITIL v.3への対応については、現在検討中である。

ここまで、弊社が近年、戦略的に取り組んできた、ITオペレーション・プロセスの標準化活動の一端を簡単にご紹介して来ました。なお、ガートナーリサーチでは、この活動に高い評価をいただき、ケーススタディ・レポートでは更に詳細な分析、成功要因と教訓が整理されております。

以上、レポートの詳細については、Gartner社ホームページ、または弊社、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。

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